樹脂製品は工業製品に必要不可欠なものですが、所定の寸法や形状に仕上げるためには適切な加工や後処理が欠かせません。

樹脂の後処理技術の一つに「アニール処理」があり、樹脂製品の安定化に必要な処理です。

本記事では樹脂製品に対するアニール処理についての詳細や、実際の事例をご紹介します。

アニール処理とは

アニール処理は工業製品に施される熱処理の一種で、アニーリングとも呼ばれます。

熱処理は製品を高温に加熱することで内部組織を変化させ、さまざまな特性を引き出す後処理法です。

アニール処理は元々金属に対して行われる熱処理の一つで、金属では「焼きなまし」「焼鈍」という呼び方をされます。

アニール処理のメリットは以下の通り複数あり、目標とする特性に合わせて加熱温度、加熱冷却時間等を調整します。

・内部ひずみ、残留応力の低減

・内部組織の軟化、延伸性向上

・切削性向上

アニール処理は金属だけでなくセラミックや樹脂部品に対しても行われる熱処理で、特に樹脂製品に対しては残留応力の低減が主な目的になります。

アニール処理の基本原理

樹脂素材のアニール処理では残留応力の除去によって製品の変形や割れを軽減する効果が期待できます。

アニール処理は温度で組織が変化する熱可塑性素材で処理が可能ですが、熱硬化性の樹脂には適用できません。

樹脂製品の製造時には溶融させた樹脂を金型に注入することで所定の形状を得ますが、高温の樹脂が冷却される過程で製品外部と内部の収縮が不均等になると内部に残留応力が残ります。

残留応力は時間の経過とともに製品を歪ませて寸法精度を低下させたり、割れを引き起こすため、樹脂製品の安定化の為にアニール処理を行います。

アニール処理では一度成形された樹脂製品を再度加熱することで内部の組織を変化、軟化させ、炉内で徐々に冷却することで残留応力を除去。樹脂製品の変形抑制に効果があります。

なおアニール処理時の温度条件や効果は結晶性樹脂と非晶性樹脂で異なりますので、材料に応じた適切なプロセスが必要です。

結晶性樹脂は固化時に内部組織が規則的に並んだ決勝構造を持つためアニール処理にはガラス転移点以上の温度が必要ですが、非晶性樹脂は結晶構造のほぼないランダムな組織のためガラス転移点以下の低い温度でもアニール処理が可能です。

・結晶性樹脂:PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)等

・非晶性樹脂:PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)等

有恒商会で出来るアニール処理について

有恒商会では各種樹脂製品に対するアニール処理を行っており、ご要望に応じた熱処理が可能です。

当社ではアニール処理用の熱処理炉を有しており、1,570mm×1,570mmサイズまで処理可能ですので大型の素材や製品のアニール処理が可能です。

最大300℃までの温度管理機能を持っており、アニール処理のプロセスを1台で完結可能。

なお本熱処理炉は主に樹脂製品に対応した温度域ですので、金属材料のアニール処理には不向きです。

アニール処理は当社販売の製品に施すこともできますし、ご要望があればお客様持ち込みの材料に対しての熱処理も可能です。

有恒商会のアニール処理事例

次に当社におけるアニール処理の事例をご紹介します。

【高温環境下でのフッ素樹脂ガスケットの変形問題を解決! 】

本案件ではお客様が開発されたフッ素樹脂ガスケットの変形問題を当社にご相談され、当社のアニール処理技術にて問題を解決したものです。

高温環境下で使用されるフッ素樹脂ガスケットに対してアニール処理を行うことで、使用時に起きる変形を抑制して機能を保つことができました。

ベースのフッ素樹脂ガスケットは高温下での使用時に熱収縮が発生したことで、円形のガスケット形状が楕円形に変形し正常なシール性能を発揮できません。

そこでフッ素樹脂ガスケットの加工前に材料へのアニール処理を行い、あらかじめ熱収縮を起こしたあとでガスケットの形状に加工するプロセスに変更しました。

その結果、高温環境下での使用時にもアニール処理済みのガスケットは大きく変形しないことが実験にて確認され、お客様のご要望どおりのガスケットをご提案出来ました。

当社で取り扱う樹脂製ガスケットにも同様の処理が行なえますので、使用環境をご相談頂ければ適切な処理をご提案できるでしょう。

【超高分子ポリエチレンロール材の巻き癖を改善! 】

本案件ではお客様がお持ちの超高分子ポリエチレンシートのロール材に巻き癖が付いており、平面的な製品に加工する際の問題となっていました。

この材料は従来からアニール処理にて巻き癖を処置していましたが、お客様は更なる巻き癖の軽減を求められたため、当社にてアニール処理のプロセスを見直して問題解決に導きました。

ロール状のポリエチレンシートをそのままアニール処理しただけでは平面状にはならないため、まず当社では材料に平面的な荷重ができる治具を開発しました。

治具によってロール材を平面的に伸ばしながらアニール処理が可能となり、さらに加熱方法を調整することによってロール材の巻き癖を大幅に改善できました。

現行のアニール処理では品質的な課題がある場合にも当社では解決のために別プロセスをご提案できますので、ぜひ一度ご相談ください。

お問い合わせは有恒商会へ!

樹脂製品のアニール処理については当社所有の熱処理炉にて対応可能で、お客様のご使用環境に応じた処理をご提案させていただきます。

またお客様持ち込みの材料に対するアニール処理も行っておりますので、樹脂製品の変形や破損にお悩みの際にはぜひ一度有恒商会へお問い合わせください。

当社営業よりご回答させていただきます。