樹脂製品は工業製品、製造機械等に幅広く利用されていますが、薬品にさらされると劣化してしまうことがあります。
その際に耐薬品性の高い樹脂が必要となりますが、どんな樹脂が適しているのでしょうか?

この記事では耐薬品性の樹脂の重要性や、耐薬品性の高い素材であるゴア®ハイパーシート®ガスケットの特徴をご紹介します。

薬品でなぜ樹脂が劣化するの?

製造の現場では工程によって酸やアルカリ性の薬品を使用しますが、製造機械にとってこれらの薬品は悪影響を及ぼす場合があります。

金属や有機素材では薬品によって溶解や腐食などが起こるため、多くの場合耐薬品性のある素材として樹脂製品が使われますが、その樹脂も素材によっては劣化が起きて問題になります。

なぜ問題が起こるのか、まずはそのメカニズムを説明しましょう。

薬品による樹脂の劣化とは

樹脂は安定性の高い材料ですが、薬品に対しては影響を全く受けないわけではなく次のような劣化を引き起こします。

①膨潤・溶解 :樹脂になじみやすい薬品が浸潤して膨張、溶解を引き起こす

②分解:樹脂の分子鎖に薬品が作用し、加水分解や酸化分解を引き起こす

③変色:加水分解や、薬品への反応で変色が発生する。

④ケミカルクラック:樹脂にかかる応力と薬品の影響による相互作用で、短期的または長期的に樹脂にクラックが発生する

このような劣化が起こると樹脂製品は正常な働きをせず、部品の破損や薬品、内容物の漏れ、軟化などを引き起こします。

樹脂製品のメンテナンスコストは削減できる

樹脂部品に溶解、分解、変色やケミカルクラックなどが発生した場合、次のような事例が問題となります。

・樹脂ガスケットが劣化することでシールしていた流体のリークが発生

・製品の変色により外観不良と認定される

・樹脂製保護カバーの劣化により保護対象物へダメージが及ぶ

こういった事例の発生を防ぐためには、樹脂部品の定期的な交換が必要となりますが、劣化が早く交換頻度が高いとメンテナンスコストの増大に繋がります。

そのため問題の箇所を薬品耐性の高い樹脂素材、樹脂製品に置き換えることで、コスト問題の解決策にもなるのです。

耐薬品性はフッ素樹脂がおすすめ

樹脂にはさまざまな素材がありますが、耐薬品性も差があります。

以下に代表的な樹脂素材の耐薬品性をまとめました。

一般的な樹脂素材であるPVCやPP、UHMW-PEなどはある程度は酸、アルカリに対して耐性がありますが、有機溶剤に対しては耐性が低いです。

ポリイミドやポリエチレンは有機溶剤に対してそこそこの耐性を持ちますが、そのほかの点では弱点があります。

これに対してPTFEやPEEKなどは酸、アルカリ、有機溶剤に対して高い耐性を発揮し、シビアなコンディション下でも使用できる性能を持ちます。

ただしPTFEとPEEKの比較ではわずかにPTFEのほうが耐性が高く、PEEKは硫酸に対しての弱点があります。

PTFEには他にも良好な特性があり、耐熱性は連続使用温度で260℃と高温下での長時間の使用に適しています。

また低圧縮永久歪も低いため圧縮下での変形が少なく形状安定性が高い素材です。

ePTFE製樹脂シート「ゴア®ハイパーシート®ガスケット」について

有恒商会では100%ePTFE製の樹脂シート製品である「ゴア®ハイパーシート®ガスケット」を取り扱っており、耐薬品性が必要な箇所への適用が可能です。

本製品は耐薬品性としてpH0〜14.0と幅広い範囲に適応しており、有機溶剤に対しても高い耐性があります。

耐熱性は通常使用範囲でも-60℃〜230℃、最大使用可能範囲は315℃まで対応しており、一般的な樹脂シートが対応できない高温部位に使用可能。

また通常のPTFEシートは追従性に乏しいのですが、ゴア®ハイパーシート®ガスケットは特殊な製法によって多孔質の柔軟性に優れた素材になっており、ガスケット等のシーリング材にも適しています。

弊社ではゴア®ハイパーシート®ガスケットの原反シートから以下のような加工を行っており、シーリング材だけでなく樹脂製カバーやジャバラなどにも加工できます。

[弊社で対応できる加工]

・打ち抜き加工

・カット(カッティングプロッター等)

・クリーンルーム内加工

・アニール処理

・縫製加工

・ハーフカット加工

・貼り合わせ加工

ゴア®ハイパーシート®ガスケットのでの対策例

弊社にはお客様から耐薬品性の高い樹脂素材についてお問い合わせが寄せられますが、その中から弊社提案のゴア®ハイパーシート®ガスケットにて課題解決した事例をご紹介します。

上下駆動装置の機構保護カバーを置き換えてメンテナンス頻度の削減に貢献

本件のお客様は上下駆動機構保護カバーの薬液による劣化に悩んでおられました。

加工の高性能化に伴って従来のゴム製機構保護カバーが短期間で化学的に劣化するようになり、メンテナンス頻度が増加しました。

その結果メンテナンスコストと労力の増大を招き、顧客満足度が低下していました。

そこで弊社からゴア®ハイパーシート®ガスケットの加工製品をご検討いただき、従来製品と同形状、同機能を持つ機構保護カバーを製作しました。


ゴア®ハイパーシート®ガスケットが持つ抜群の耐薬品性によって劣化が抑えられ、長期間使用可能な機構保護カバーが実現しました。
一般的な素材よりイニシャルコストこそかかりますが、交換頻度が下がるためお客様には満足していただきました。

本件では弊社の持つゴア®ハイパーシート®ガスケットの適切な加工技術(カット、縫製)が役立ち、課題の解決に導いた事例となります。

導入時の注意事項

ゴア®ハイパーシート®ガスケットは耐薬品性、耐熱性、追従性など高い性能を持ちますが、アルコール等の特定の薬品に対しては表面で弾くことができず内部に吸収される場合があります。

また多孔質素材のため気体などを完全に遮断できない点にも注意が必要です。

ゴア®ハイパーシート®ガスケットの導入にあたっては使用環境、用途をご確認頂き、本製品が適合するかどうかの判断が必要です。

お問い合わせは有恒商会へ!

有恒商会ではゴア®ハイパーシート®ガスケットの各種加工を行っており、カット、クリーンルーム内加工、縫製、貼り合わせ等が可能です。

樹脂製品の薬品による劣化に悩んでいるお客様はぜひ一度有恒商会へお問い合わせください。

当社営業よりご回答させていただきます。