放熱シートは機械部品や半導体の熱対策として使用される製品で、熱に弱い部品の保護に活用されています。

本記事では放熱に関するメカニズムから、有恒商会が取り扱う高性能なグラファイト製放熱シートについてご紹介します。

放熱のメカニズムと放熱シート

放熱は物体の表面から熱が放散する現象で、一般的には物体周囲の空気に熱が移動することを指します。

熱の伝達経路と熱伝導率

熱の移動は高温部から低温部に向けて起こる現象で、物体からの放熱には主に3種類の経路があります。

①熱伝導:分子間の振動による熱移動

②熱伝達(対流):流体(空気など)の対流による熱移動

③熱放射(ふく射):電磁波(赤外線など)の放出による熱移動

また物体にどのぐらい熱が伝わりやすいか、を表す指標として「熱伝導率」があり、物質ごとに異なる数値を持ちます。

一般的な物質の熱伝導率を挙げると、ダイヤモンドやグラファイトなど炭素系材料は高い数値を持ち、銅やアルミニウムなど身近な金属もそこそこ優秀です。

一方で空気の熱伝導率は圧倒的に低く、空気層があると熱伝達の妨げにもなります。

熱伝導率[W/m・K](0℃)
ダイヤモンド1000〜2000
人造グラファイト1500〜1700
天然グラファイト300〜400
428
403
319
アルミニウム236
83.5
空気0.024

熱メカニズムと放熱シート

工業製品や半導体は動作時の熱による破損が懸念される場合には放熱が必要ですが、その際に良く使用される機構が銅やアルミニウム製の「ヒートシンク」や「ヒートスプレッダ」等の放熱器です。

熱源の物体から放熱器に熱伝導し、その後に放熱器から外気へ熱伝達することで放熱されます。

シンプルな構造で、風を送るファンと組み合わせることで効率的に放熱できるため、多くの分野で利用される機構です。

熱源とヒートシンク等は密着させることで効率的に熱移動ができますが、実際には部品形状や表面の凹凸などで間に空気層が出来て熱移動を阻害します

そこで熱源とヒートシンク等の間に密着性の高い放熱シートを挟むことで熱移動がスムーズになり、熱伝導率の高い素材を使用することで熱源からの熱移動を促進できます。

特に半導体は性能向上と共に発熱量が増大する傾向にあるため、放熱性を高める放熱シートの必要性は年々増しています。

放熱シートの種類や主な特徴について

放熱シートには大きく分けて2種類の素材があり、それぞれ熱伝導率や耐熱性で用途が異なります。

樹脂シート

樹脂製の放熱シートはアクリルやシリコンの基材に高熱伝導性を持つ充填剤を配合して作られており、樹脂素材の柔軟性で熱源に密着します。

充填剤には金属やアルミナなどが用いられ、放熱シートの熱伝導率は安価なもので2W/m・K前後、高放熱性の製品で5W/m・K〜8W/m・Kです。

樹脂シートの厚みが数百μm〜1mm程度が主流で幅広い分野で活用されます。

また樹脂シートは基材の材質で耐熱性が決まり、使用温度は120℃〜200℃程度となっています。

グラファイトシート

グラファイト製の放熱シートは基材そのものが高い熱伝導率を持っており、層状のグラファイトの結晶構造を持ちます。

グラファイトシートは方向で異なる熱伝導率を有する異方性があり、面方向に600W/m・K〜1500W/m・Kもの圧倒的な熱伝導率によって素早い熱拡散が可能。

また厚み方向には5W/m・K〜20W/m・Kの熱伝導率を持ち、ヒートシンク等への熱移動も効果的に行なえます。

グラファイトシートは厚みを数十μm〜百μmと非常に薄くすることも可能で、軽量で密着性が高く狭い箇所にも使用できます。

加えてグラファイト自体が不活性雰囲気中なら3000℃を超える温度でも使用可能なため、樹脂シートが対応できない高温環境に対応しています。

有恒商会取り扱い放熱シートのご紹介

弊社ではグラファイトの放熱シートを各種取り扱っており、ご要望に応じた製品をご提案できます。

ここでは代表的な製品をご紹介します。

T-Global社製 T68グラファイトシート

T-Global社製 T68グラファイトシートは面方向の熱伝導性に優れる製品で、高い熱拡散性能を持ちます。

T68グラファイトシートの熱伝導率は面方向で1500W/m・Kと非常に高く、熱源から伝わった熱をシート上で素早く均一に拡散できます。

厚み方向には5W/m・Kと標準的なスペックですが、熱拡散によって広い面のヒートシンクへ熱移動ができますので高い放熱効果が期待できます。

特性値

項目単位
熱伝導率(面方向)1500 ± 100W/m·K
熱伝導率(厚み方向)5 ± 10%W/m·K
厚さ0.025mm
熱拡散率8.5 ± 0.5cm²/s
使用温度範囲-40 ~ +400
曲げテスト耐久10,000
熱容量0.895J/g·K
導電率>13,000S/cm
密度2.1 ± 5%g/cm³

本製品にはグラファイトシートの片面、もしくは両面に両面テープやPETテープを貼ったバリエーションあり、粘着テープでの固定や絶縁性をもたせることも可能です。

それぞれのバリエーションで耐熱温度が異なりますので、選定の際はご確認ください。

有恒商会の提案事例の紹介

放熱シートは高温部の熱対策に有効な製品で、弊社にもお客様からさまざまなお問い合わせがございます。

ここでは実際に寄せられた問い合わせ事例を、弊社提案の放熱シートで解決した事例をご紹介します。

半導体製造装置メーカーからの厳しい放熱設計要求にグラファイトシートを提案

半導体関係装置を手がけるメーカー様は装置の温度対策に悩んでおられ、高いレベルで放熱出来る方策を求めていらっしゃいました。

そこで弊社からは熱伝導性が特に高いグラファイトシートをご提案し、放熱性能に対して満足して頂きました。

一方、製造装置への取り付けに関してはグラファイトシートの加工が必要でしたが、グラファイト材の特性として高精度の加工が難しいため課題が残ります。

それに対し弊社にてシート加工の工法を工夫した結果、安定した加工が実現したため、お客様のご要望を満たすスペックが実現しました。

最終的にお客様からはグラファイトシートの加工を含めて弊社に製品を発注頂きました。

お問い合わせは有恒商会へ!

弊社では放熱シートの中でも特に熱伝導性の高いグラファイトシートを取り扱っており、厳しい要求の高温対策にも応える製品です。

グラファイトシートは脆く柔らかいため加工が難しい素材ですが、弊社ではプロッター、打ち抜きプレスなど多彩なカット工程が可能。

形状やロットに合わせた柔軟な加工対応が行えます。

放熱シートでお悩みの際にはぜひ一度有恒商会へお問い合わせください。

当社営業よりご回答させていただきます。